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「東の麓」新藤製造部長の話 2.純米酒とアルコール添加酒 [地元のこと]

2.純米酒とアルコール添加酒

日本酒についていささか関心を持つようになったのは、高畠町夏刈の紅一点酒造の長谷川平内さんとの付き合いからだった。30数年前にさかのぼる。

長谷川家の歴史は古く伊達、長井の時代からこの地に在ったという。平内さんは昭和3年生れ。若くして父親を亡くし、女傑と言われた母親とともに戦後の酒造界を生き抜いてきていた。仙台国税局長だった黒金泰美の政界進出に大きな力になったのが平内さんの母親だったと聞く。黒金代議士は衆議院議員を9期務め、第二次池田内閣の官房長官として入閣を果すが、吹原産業事件に絡んで大成には至らなかった。

この事件に題材をとった梶山季之の小説『一匹狼の唄』1967)、平内さんもモデルのひとりとして描かれている。同じくこの事件がテーマの映画『金環触』1975)では仲代達矢が黒金泰美を演じている。昭和20年から40年代、置賜の保守政界は黒金泰美(1910-1986/議員歴1952-1976)と木村武雄1902-1983/戦後議員歴1952-1983)の両代議士が激しく勢力を争っていた。事件が大きく取り上げられた背景にはその争いがあったのかもしれない。

私たちが平内さんと出会った時には母親はすでに亡く、政治の世界からも離れて、酒造りの傍ら家族とともに屋敷を解放して「政宗そば」の看板を上げ、こだわりの手打ちそばで結構繁盛していた。商工会青年部の仕事で菊まつりのポスターを貼ってもらうべく訪ねたのがきっかけで、その後われわれ仲間との交流が深まることになる。神道天行居を知ったのも平内さんによってだった。

酒造りには先ずコメを買うための資金力が必要なのだが、平内さんには当時資本力も信用力もない中での、傍目にも大変なやりくり経営だった。そんな中で編み出していたのが、お客様からコメ代金と称して前もって金を集める方法だった。なんと言っても「純米酒」が売りだった。一時期東京で「紅一点」という居酒屋を開いていたこともある。奥さんは結婚前は「主婦の友」だったか「主婦と生活」だったかの雑誌記者で、その時の出会いか。幅広い交遊があった。すぐそばの資福寺跡の縁で伊達藩士会の一員だった。神道天行居のつながりもあった。全国に「紅一点」のファンがいた。

当時は「純米酒」がまだ珍しい時代だった。平内さんは醸造用アルコール添加を酒造りの邪道として批判した。「純米酒ではいくら飲んでも悪酔いは決してしない」ということで、われわれ仲間45人で平内さんに泊まり込んで身体を張っての実験、確かめさせてもらったこともあった。たしかにみんな、いい気持ちの目覚めだった。そういうことで私はずっと「純米酒」信奉者だったのだが、このたび新藤部長からはじめて「醸造用アルコール添加」の意義を聞くことができた。

東の麓パンフ-1.jpg

戦後しばらくはアルコールなら何でもいい時代だった。(学生時代、蒸気機関士だった23歳のとき「大丈夫」と言われて飲んだ酒がメチルアルコールで失明、その後鍼灸の資格をとって盲学校の先生をしておられた方に大変お世話になったことがあった。)アルコールで3倍に増やした「三増酒」はごくあたりまえの時代が長くあり、それが日本酒低迷の原因になったといわれている。満州や戦中の米不足の中で普及したものだった。

しかし、日本酒におけるアルコール添加は本来、増量を目的とするものではなかった。純米もろみからの酒にアルコールを添加する「柱焼酎」というのが江戸期からあった。防腐目的であったが、そのことで甘味の強い酒がシャンした味になることから「柱」焼酎といわれたという。現在のアルコール添加もこの伝統を受け継ぐ。酒のいい香りは絞った時に粕の方に移るのだという。絞る前のもろみにアルコールを添加することで香りを残す効果がある。さらに品質劣化を抑える効果があり、必ずしも「純米酒」と「添加酒」を比べて「純米酒」がいいということにはならないというのがプロとしての見解だった。納得。

今回用意された酒はそういうわけで純米酒以外の酒6種。長門屋さんこだわりの料理と共にじっくり味わう。その違いがどこまでわかったか心もとないが、5番目に出された「大吟醸 東の麓 袋どり出品酒」の印象は強く残る。日本酒の最高峰として舌にしっかり記憶させておきたい。料理では「醤油をつけずにそのまま食べてみて下さい」と言われて出された天然ヒラメと明石のタコの刺身が印象に残る。あちこち巡っているうちに、ある御膳にだけ特別に出してもらったという鮒ずしを漬けた米麹粕の味わいも忘れ難い。

以上、あれこれ昔を思い出しながらの報告でした。日本酒をいただく時の構えが変わったように思います。


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コメント 2

LargeKzOh

めい様:
 当方も醸造用アルコール添加酒が常に純米酒より劣るとは思っておりませんでしたので、とても貴重なお話でした。
 ありがとうございました。
 お酒は、その作り方ではなく、自分の好みで味わいたいと思っております。

by LargeKzOh (2017-02-24 11:41) 

めい

LargeKzOh様

コメントありがとうございます。
次々出てくる6種類の酒、じっくり味わうべくちびりちびり飲んでいたのですがそのうちすっかり酔ってしまいました。ただ、5番目の新酒鑑評会用の酒は違いがわかりました。美術品でも最高レベルがわかっていれば偽物の見分けはつくものだということで、酒にも同じことがいえるかと必死で味を記憶しようとしましたが、その頃はもうだいぶ酔いが回っていたので、そう自信があるわけではありません。ただ今回の話で、私の中にあった「純米酒神話」からは解放されました。あくまで「舌」で味わうこと、その姿勢ができたような気がします。

by めい (2017-02-24 17:43) 

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