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mespesadoさんによる1億人のための経済講座〈Ⅱ〉(3) 戦後経済のインフレについて  [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

1301.jpgradio.jpg《高度成長下の日本における「所得増加率が物価上昇率を上回っていた」という事実は、まさに供給不足の解消のプロセスや食管法や出稼ぎ労働という時代の特殊性に依存していたメカニズム》
体験としての高度成長期がよみがえります。前回の朝ドラ『ひよっこ』(私の一級上がモデル)が再現してくれていました。(↑写真http://nikko.us/17/108.htmlから)

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136 名前:mespesado 2018/01/13 (Sat) 15:16:46 host:*.itscom.jp
>>74
 さて、松尾さんの本の書評が第3章第2節のところで中断していました。
 著者は1930年代のアメリカのニューディール政策の例を挙げて、「オカネをジャンジャン刷ったのに、実際ひどいインフレになどならなかったことを実際の「マネタリーベース」と「消費者物価指数」のグラフを重ねることによって証明します。実際、1932年から1950年までで、マネタリーベースは5倍に膨れ上がっているのに、消費者物価指数は1.5倍くらいになっているだけです。
 次は第3節の「長期金利高騰も国債暴落も起こらない」について。
 ここには、日銀が国債を引き取って政府支出をまかなうと、国債の信認がなくなって国債の価格が暴落し、長期金利が急騰するのではないか、というよくありがちな想定質問に対して、そのようなことはない、ということをきちんと説明しています。
 すなわち、単に国債を市場に放出すれば、国債の価値が(従って価格が)下落して金利が上昇しますが、日銀が同じ額だけ市場から国債を購入してしまえばよい、と説きます。
 更に、そんなことをしてどんどん借金を増やしていったら「将来返せなくなるかも」と心配してやはり国債の信認が下落するのでは、という、これまた(特に財務省の虚偽のプロパガンダに洗脳された人に)ありがちな想定質問に対しても、発行した国債は日銀の金庫に入り、返済期限が来たら「借り換え」るので、オカネを返す期限を永遠に先延ばしできる、従って、日銀が政府から(事実上)買い取った国債は、「この世から消えてなくなるのと同じ」である、と明快に説明しています。
 また、日本の借金がGDPの倍の1千兆円もあることを緊縮派の人たちは心配するが、そのうちの4分の1は日銀の金庫にあって存在しないのと同じである。でもどうしても将来の借金が不安だというのなら、今のうちからもっと日銀が国債を買い取って、この割合を増やせばよいだけだ、と言っています。全くもってそのとおりです。
 また、一番スッキリする解決法は、日銀が国債を買い取ったあと、これを変換無期限の債権である「永久利付債」に転換してしまえばよい、と >>118でひとことじーさんが引用した三橋氏のブログで紹介されているアデア・ターナー氏と同じことを主張しています。
 で、実際に長期金利が高騰したのかどうかを、論より証拠で長期金利推移グラフをもとに、安倍政権が発足早々に金融緩和を始めたとき、ほどなくして長期金利が上昇したので「ほらみろ」と緊縮派が騒いだが、実は金利の上昇は一瞬だけで、結局は長期金利は低下し続けていることを示しています。
 さて、次に、日銀のバランスシートが毀損したら何が困るのか、という、このスレッドの >>89 の猿都瑠さんの書き込みに端を発する話題に対しても、ある「思考実験」でわかりやすく説明しています:

> 日銀が大量のドル資産を買い入れておカネ(円)を発行したとしましょ
> う。その後、突然急激な円高が起こったとします。今まで1ドル120
> 円だったのが、急に60円になっちゃった。そしたら日銀の資産である
> ドル資産の価値は半分に収縮し、日銀のバランスシートは大幅に毀損し
> ます。ではインフレになるでしょうか。なるわけないですね。輸出が壊
> 滅して、逆に大変なデフレになります。

 そして、将来インフレの心配が出てきたら、日銀は手持ちの国債を売ればよい。この国債のストックは、仮に国債の価格が暴落して2分の1になったとしても100兆円以上もあるので「タマ不足」になる心配もない、とダメを押しています。
 また、インフレになれば金利も上昇し、企業がおカネを借りにくくなって経済活動が鈍化して経済のヒートアップが抑えられるのでインフレが沈静化する、とも言っています。また国債を市中に売却すれば、その国債が償還を迎えたときには償還金が市中に出回りオカネが増えるので、(更にインフレになるのを防ぐため)、そのときは(オカネの量を減らすため、通貨の回収として)増税が必要だ、とも述べています(カッコ内は私が補ったもの)。
 次の第4節は「『歯止め』としてのインフレ目標」と題して、日銀が無からオカネを作ることに味を占めてしまうと、デフレが解消してインフレになってもオカネのバラマキをやめられなくなってしまうのではないか、という懸念に対する歯止めの話です。
 この場合、例の財政法第5条はザル法なので歯止めにならず、真の歯止めになるのが、まさに「インフレ目標」である、というのです。つまり、インフレ目標というのは、実際にその数値になるまでオカネを出し続ける、という意味ではなく、その数値になったらオカネを出すのをやめる、という意味であると解釈するわけです。そして、しばらくの間は年10兆円以上の支出を緩和マネーで賄う余地がある、と述べています。   (続く)
137 名前:mespesado 2018/01/13 (Sat) 16:19:41 host:*.itscom.jp
>>136
 第3章の最後の第5節は、「なぜプラスのインフレ目標を掲げるのか」と題して、まずなぜデフレだとダメかということを説明します。
 その理由として著者は、デフレで将来の物価が下がるという意識が定着すると、「買い控え」が起きてますます不況になるし、家やクルマなどをローンで買うのも、買い替えで売ろうとするとその時に価格が下がってしまうので怖くてローンも組めないのでローンの需要も減って、ますます不況になる、というわけです。
 以上は経済学の標準的な教科書どおりの説明ですが、私はこのような「理由」には少し納得がいかないところがあります。なぜなら生活必需品は買い控えなどできないし、昔の高度成長期の「あこがれの高額商品」なんて今の時代には存在しないので、「買い控え」という現象がそもそも生じないと思います。それにローンによる高額商品というと、現代では家とクルマくらいでしょう。しかし、今って金利はほとんどゼロなので、これ以上金利が下がることを心配する必要もないですし、家やクルマってこのデフレ時代に実はなかなか値段が下がらないので有名なモノなんですよね。だからこういうローンについてもやはり買い控えとか起きそうにないと思うのです。
 ただ、私が前に説明したように、「強者ほど賃下げに抵抗し、実際抵抗できる」ので、経済的に強いものが所得のデフレを回避し、そのしわ寄せが経済弱者に来るからデフレはよくない、ということは言えます。なので、理由は異なるけれども「デフレがよくない」という結論には全く賛成です。
 さて、この節の最後には「デフレが良くないというが、じゃあインフレで物価があがると生活コストが上がって困るじゃないか」という想定質問に対して、過去のインフレ時代には物価以上に賃金が上がっていたという証拠をグラフによって示すことで反論します。つまり物価上昇率よりも賃金上昇率の方が常に高かったから大丈夫だよ、というわけです。ついでにデフレ時代に物価下落率より所得の下落率の方が大きかったことを示すグラフも掲げてデフレがダメである理由に念を押しています。
 ただ、私はこの議論には疑問を感じました。なぜなら、過去のインフレ時代に物価上昇率より所得増加率の方が大きかったのは、供給不足が解消に向かうプロセスにあったからであって、今と需要と供給のバランスが全く異なっていたので、今後の予測には当てはまらないと思うからです。
 私は前から「今後は物価上昇は起こりえない」と書いてきましたが、一つだけ例外があって、それは国際的に資源が手に入りにくくなり、「輸入物価が高騰し続ける」というケースです。この場合、あらゆる商品の原料が値上がりするのでインフレになります。この場合は別に国内での供給不足が解消するプロセスにあるわけではありませんから「物価上昇率より賃金上昇率の方が上回る」理由がありません。つまり、原料に輸入品の占める割合が多い商品から「なるべく上げ幅を抑えるようにして」値上げが始まり、原料に輸入品の占める割合が低いものは価格が据え置かれる傾向になりますから、前者に従事する人たちの所得が抑えられ、後者に従事する人の所得はあまりかわらない、というかなりいびつな形で所得格差が出てくることでしょう。ただし、技術大国ニッポンが手をこまねいているとは思えず、高度成長の終わり頃に起きた「石油ショック」を、一時的に「狂乱物価」が襲いながらも技術革新に力を注いで省エネ技術が進歩し、再び物価が安定するようになった実績を持つわが国では、このような輸入物価の高騰に起因するインフレも技術力でやがては克服することでしょう。つまり、恒常的なインフレというのはやはりこの日本では起きそうもない(従って、インフレの方が良い、という理屈は成り立たないというか、考える必要はない)、ということになると思うのです。    (続く)
 

139mespesado : 2018/01/13 (Sat) 21:53:38 host:*.itscom.jp

>>137

 前稿で、ちょっと説明を端折ってしまった部分があるので補足します。

 高度成長期の供給不足が解消していくプロセスで、賃金の上昇率の方が物価上昇率を上回っていたと述べましたが、そのメカニズムを説明していなかったので説明しておきましょう。

 まず白物家電の生産に携わる会社の従業員は、とにかく家電商品が普及率ゼロから始まってどんどん拡大していましたから、大量生産により労働者一人当たりの生産個数が多いため、その売り上げが個々の従業員に還元されて給与が増えます。そして増えた給料によって、自らも家電製品を購入することができたのでした。

 これに対して需要が頭打ちの農業従事者は、工業従事者がだけが裕福になるのでは不公平なので、工業従事者の収入アップ率分と同じ率だけ農産物の単価を値上げすることにより、工業従事者の裕福さに追いつくことができます。でもこれだと農産物の物価上昇率は所得の上昇率とイコールになってしまいますよね。どこがおかしいんでしょう?

 ヒントとなるキーワードは「食管法」と「兼業農家」です。

 米農家の場合、2004年までは、食管法の定めにより、「生産者米価」と「消費者米価」というものが別々に定められていて、政府が農家から米を高く買い入れて、それを消費者に安く販売していました。このため、こと米に関しては、物価上昇率である消費者米価の上昇率より米農家の収入の増加率である生産者米価の上昇率の方を低く抑えるということが可能だったのです。そしてその両米価の差額は、財務省的な表現をすれば「税金で補填されていた」ということになるのですが、要するに、当時は高度成長で企業が借金を増やし、信用創造でオカネが勝手に増えていたので、その増えたオカネの一部を農家に還元していた、ということに他なりません。

 一方米以外の農家、つまり野菜や果物の農家についてはこのようなシステムの対象外ですが、そもそも農家も専業農家は少なくなり、多くの農家が兼業農家として農業以外からも収入を得ていた(いわゆる出稼ぎ労働者)ことにより、副業で収入を増やしてきたのです。

 以上が「国民全体で、所得の増加率が物価上昇率を上回っていた」ということを可能たらしめたカラクリです。

 こうして見ると、高度成長下の日本における「所得増加率が物価上昇率を上回っていた」という事実は、まさに供給不足の解消のプロセスや食管法や出稼ぎ労働という時代の特殊性に依存していたメカニズムであり、決して時代によらない普遍的なメカニズムなどではない、ということがわかると思います。    (続く)


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