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mespesadoさんの経済談義(6)どうやったら物価(賃金)は上昇するか [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

染屋の仕事もデジタル化したことで、手作業の時代に比べ格段に生産性が上がったにもかかわらず、時間的余裕はできたが、どうも「豊かになった」という実感が伴わない。手作業時代と同じ価格であれば儲かってウハウハなのかもしれないが、楽になった分価格は当然下がる。価格を決めるのも、昔は自分の商圏内だけで判断して通用していたのが、今はそうはいかない。「安い」情報がどんどん入る。染物のデジタル化に移行し始めて20年近くなるが、この間ずっとデフレマインド。価格もずっと据え置き、どころかぎりぎりまでの安さの追求。「値上げできる雰囲気」が待ち遠しい。
*   *   *   *   *
453:mespesado : 2018/05/26 (Sat) 13:40:58 host:*.itscom.jp
 経済学の用語に「フィリップス曲線」というのがあります↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%B9%E6%9B%B2%E7%B7%9Aフィリップス曲線2009-05-21.gif 「縦軸にインフレ率(物価上昇率)、横軸に失業率をとったとき」のグラフをフィリップス曲線というのですが、これが右下がりの曲線、すなわちインフレが強くなるほど失業率が減少する、というのがフィリップス曲線に関する経験則です。で、その理屈は「期待インフレ率が上昇すると、名目賃金には硬直性があるため、実質賃金(=名目賃金/予想物価水準)が低下する。完全雇用が達成されていない短期においては、この労働力価格の低下を受けて雇用量が増加し、失業率が減少する。」のだそうです。
 
しかし、アベノミクス下では、この因果関係を逆に捉えて「雇用が改善されて失業率が限界近くまで下がると人が雇いにくくなるから賃金が上昇し、それを販売価格に転嫁しなければならないから物価が上昇する」という機序でフィリップス曲線の理論を正当化するのが普通です。
 しかし、実際の経済が本当にそうなっているかというと話は別で、次のような論考が既に2016年に登場しています:
【論風】消えたフィリップス曲線 アベノミクス第3の矢 全力で
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/160804/mca1608040500001-n1.htm

>  次に金融緩和から物価上昇への道筋として期待されるフィリップス曲
> 線、すなわち失業率低下が物価上昇と連動する現象が、なかなか顕著に
> 起きない問題がある。実は米国も同様で、大胆な金融緩和後、歴史的な
> 低失業率が数年にわたり続いているのに、賃金も物価も上昇ペースが鈍
> い。もはやタイムラグでは説明困難な「フィリップス曲線の消滅」(正
> 確にはフラット化)である。

 で、その「フィリップス曲線の消滅」の理由を著者は次のように説明しています:

>  グローバル化の時代、「モノ」は世界中からどんどん入ってくるので、
> 国内の失業率が下がっても、そうそう価格は上がらず、企業も賃金を上
> げにくい。急成長中のインターネット系ビジネスに至っては、限界費用
> ゼロで無尽蔵に供給できる。今や国単位の金融政策が物価に及ぼす効果
> は限られているのだ。加えて、新興国経済の減速で、「モノ」の世界は
> ますます供給過剰。

 まさにそのとおりで、供給過多なんだからセリの原理が働かず、しかも購買手段の多様化により、物価が上がる理由がまったくなくなってしまっているので、過去の現象から帰納されただけのことに過ぎない単なる経験則である「フィリップス曲線」が「消滅」してしまうのはアタリマエです。
 ところが、このような現代に賃金上昇を実現する方法として著者が述べているのは、

>  人手不足時代に入り、今後さらなる生産労働人口の減少が長期的に進
> む中、持続的な賃金上昇を実現するために集中すべきは、やはり生産性
> の向上である。特に、わが国経済の7割を占め、世界の供給過剰の影響
> から比較的自由なサービス業を中心とするローカル経済圏の生産性革命
> に向け、成長戦略のエンジンを思い切り吹かすこと。

 確かにサービス業などでは人手不足が顕著ですから、こういった分野では人手確保のために賃上げが行われつつあります。しかし、このような賃金の「自然増」に任せているだけでは、人手の取り合いになるだけですから、賃上げ競争になり、体力のない企業が敗退して「人手不足倒産」で淘汰されるだけでしょうし、それに淘汰が進んで人手の需給が釣り合ったところで賃上げはストップしてしまいます。ところが、ここで筆者は「生産性向上」などという言葉を使っていますが、むしろ「機械化」とか「無人化」という言葉を使うべきで、このようなテクノロジーの発達を進めることで、人手不足の解消と少なくなった人間一人に支払える賃金がアップできる余地が出てくることになります。まさに著者が主張するように、アベノミクスの第3の矢である「成長戦略」の主軸を機械化、AI化の方向にこそ持っていくべきであるという意見には全面的に賛成です。
454:mespesado : 2018/05/26 (Sat) 13:41:50 host:*.itscom.jp
>>453
 前稿の続きです。ちなみに最近WSJでも好景気の日本、フィリップス曲線は死んだのか
http://jp.wsj.com/articles/SB11663286832353193751204584243530522641174という記事が配信されていますが、ここでも

> 標準的な経済モデルは、「失業率が低下すれば、インフレ率はいずれ上
> 昇する」という単純な関係に基づいて構築されている。フィリップス曲
> 線と呼ばれるこの関係は、何年も前から現実と合致していないように見
> える。日本では完全に意味をなしていないもようで、世界中の中銀当局
> 者も今後、同じ状況に直面する可能性がある。(中略)。有効求人倍率
> は47全ての都道府県で1倍を超えた。財務省の浅川雅嗣財務官は、これ
> は需要が供給を大幅に上回っていることをはっきりと示すものだとし、
> ほぼ全ての指標が良好で、物価の動きが弱いことだけが謎だとの見方を
> 示した。

>  フィリップス曲線の理論に反し、そうしたボトルネックの悪化が賃金
> に及ぼす影響は限定的で、物価に至っては全く影響が出ていない。

と同じようなことが述べられていて、

>  このモデルは、インフレ率を押し上げるにはAとBの2つの方法があるこ
> とを示唆している。Aの方法は、人々の期待を変えることだ。Bの方法は、
> 人々の期待に関係なく、経済の過熱期間を長引かせて賃金と物価の上昇
> を実現するというものだ。(中略)黒田総裁はいまBの方法に取り組んで
> いる。企業が賃上げや値上げを余儀なくされるよう、景気をあえて過熱
> させるという手法だ。また、黒田総裁が最近の講演で認めたように、人
> 々の心理が物価目標の達成を阻んでいる。「人々の間に根付いたデフレ
> マインドは予想以上に手ごわいことが明らかになってきた」と黒田総裁
> は述べた。

 おやおや、デフレマインドなどという「精神主義」に、うまくいかない責任を転化してしまいました。

> 企業は現在、値上げや賃上げではなく、そうしたサービスの質を落とす
> 方法に訴えていると同氏は言う。24時間営業をやめたファミリーレスト
> ランチェーンや、閉店時間を30分早めた百貨店があるほか、部屋食や布
> 団敷きをやめた旅館が増えている。

 これ、私が前から言ってる通りの企業の対応方法で、「生活必需品」じゃないサービスは、物価を上げたら人々は利用しなくなる(もしくは理由頻度を下げる)ことで対処しますから、いわば当然の対応です。決して「デフレマインド」などという心理的な要因なんかじゃありません。WSJさん、後から配信された記事でありながら詰めが甘いですよ~。それと、上記記事を宣伝しているWSJのツイッター:
> 好景気の日本、フィリップス曲線は死んだのか
に対して例のもりちゃんさんが

> 長々と講釈を垂れてるけど、一行で論破しましょう。
> 【まだ完全雇用ではない】

などと呟いていますが、完全雇用になったって物価は上昇しません。なぜなら上記の引用部分にあるように、「企業は現在、値上げや賃上げではなく、そうしたサービスの質を落とす方法に訴えている」からです。
 ある理論が予言する現象が、いくら時がたっても一向に現れない場合は、その理論自体を疑うべきです。もりちゃんさんは、放射能問題で「まだまだこれから大量の死者が出る」と主張する放射能危険派のことをそのような理屈で批判しているのに、こと自分の主張については「往生際が悪い」です。まあ、これは誰でもはまる落とし穴ですから、自戒のための他山の石ということにしておきましょう。

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